理工学域数物科学類計算科学コース・自然科学研究科数物科学専攻計算科学コース
研究内容紹介・数理物理学(小栗栖修)

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研究テーマ

数理物理という分野の研究をしています。数理物理を専門に扱う学科が日本にはないので初耳かもしれませんが、物理現象を数学的な手法を用いて解析する学問で海外では盛んに研究されています。

 

純粋数学は、私の偏見かもしれませんが、あらゆる事象を抽象化・汎化していくことで発展して続けている学問です。それに対して数理物理は物理現象と直結する対象に関心があり、それを数学的センスをもって解析することを志向します。数理物理は数学と物理の間の広大な領域にあるのです。

 

私は、電子レベルの微細な領域の現象を扱う量子力学に関係する現象に興味を持っています。最近では超格子と呼ばれる量子デバイスの設計に関する数学的な研究をしています。この超格子は異種半導体の薄膜の積層で作られる人工物です。面白い現象がいろいろ起るだけでなく、電子工学的な応用が期待されています。私達人間は物質的な壁を幽霊のようにすり抜けることはできませんが、電子レベルの世界ではそれが可能になります。電子が通過できないはずの半導体薄膜を通り抜けていくという不思議な量子トンネル現象です。超格子はこの性質を応用しようという試みなのです。

 

また、このような研究にはコンピュータの利用が欠かせません。数値計算によって現象をシミュレートしながら、その現象の裏に潜む数学的構造を探るのです。それに関連して、離散グラフ上の解析学にも興味を持っています。離散グラフは関数y=f(x)のグラフではなくて、格子のような頂点と辺だけからなる構造のことで、数値計算や様々なコンピュータの問題に自然に表われてきます。単純な構造の中に含まれる多様な現象に驚かされます。

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4年セミナー

4年セミナーの内容は受講者との相談の上で決めています。この2年間はグラフ理論関係の書籍を輪講しています。年度の前半はまずこの輪講を通して数学的な背景に馴染じみ、後半ではそれに加えてコンピュータを使った解析を始めることになります。

 

大学院では、数学的側面の学習のための専門書の通読と平行して、コンピュータを利用して現象の周辺を探ることになります。その作業を通して、新しい問題を見い出して修士論文の具体的なテーマを決めていくことになります。

 

なお、物理系の研究室ではないので量子力学を知らなくて大丈夫です。また物理が苦手でも数理的な解析を中心にした研究もできます。

 

興味があれば研究室のホームページ修士論文の資料(外部リンク)がありますので眺めてみてください。